22 July, 2011

Googleは私たちの記憶の仕方をどのように変えているか





インターネットが人に与える影響について、非常に興味深い研究結果がBBCで紹介されていたので思ったことなどを書いてみます。

まず、その研究について。
"Google Effects on Memory: Cognitive Consequences of Having Information at Our Fingertips(Goolgeが記憶に与える影響)"という論文においてコロンビア大学の心理学教授、Betsy Sparrowは、検索エンジンとともに生きる現代の私たちは情報自体を記憶するよりも情報のありかを記憶するようになって来ているという検証結果を報告しています。

その実験内容の1部について、『WIRED』の記事から抜粋すると、

46人の大学生を対象に行った実験では、学生たちはトリビア的な知識を覚えて、コンピューターにタイプ入力するよう指示された。例えば、「ブルーバードは青い色を見ることができない」「アル・カポネの名刺には、中古家具販売と書かれていた」といった知識だ。

半数の学生には、入力した内容は消去されると伝え、残りの半数には、入力した内容は保存されると告げた。続いて学生たちに、入力した内容を記憶から呼び戻すように求めると、「消去される」と言われたグループの方が、およそ40%よい成績だった。

興味深い現象も見られた。それは、名前や日付が変更されるなど、事実にわずかに手が加えられた場合の識別に関してだ。オンラインに記録されたと考えている場合には、それを識別する能力が低くなったのだ(87%から78%に減少)。


と、後で見ることができる(パソコン上に保存されている)と伝えられた場合には、記憶力の低下を招くことを明らかにしました。

しかし一方で(この記事では触れられていないのですが)、後で見ることができる(パソコン上に保存されている)と伝えられた場合、どこに保存されているのかといった情報の場所に関してはとても強く記憶していたことがわかりました。

このような結果をうけ、Betsy Sparrow教授は"Googleは私たちを馬鹿にしているのではなく、私たちが与えられた環境にあわせて記憶する方法を変えているだけ"と述べ、"あるトピックについて詳しい友人にその分野の情報を頼るのと同じようにコンピューターを頼るようになっている"としています。

結局、人は最も簡便な形で情報にアクセスすできるような処理を行っているのであり、情報のありかについてのみ記憶し、その詳細については記憶しないことによって、より理解すべき大きな問題に取り組んでいるのだ、というのがBetsy Sparrow教授の見解です。


この研究の記事を読んで感じたこと。それは、そもそもインターネットのある現代では誰も情報自体を記憶していないのであれば、どれだけ多くの情報に触れ、それを頭の中で整理した状態にできるか、また整理できない(表出していない)情報(経験など)をするかでしか人より抜きん出ることはできないということです。

その意味でチームラボ、猪子が言われていることというのは非常に的を得ているんだなぁー、と。(⇒こちらなど)

広く見つつ、深くへと動く、というのを実践していきたいと改めて思いました。

また、最近のLifeHackブームというのもこういった人々の自然な行動を反映したものなのではないかと思ったり。
EvernoteやDropboxが大成功していますが、まだまだ一般に浸透していないことを考えると、このマーケットの潜在的なポテンシャルはまだまだこんなものではないのかもしれませんねー。

最後に、Betsy Sparrow教授の本研究に関するインタビューを以下に。




【参考】
「Google」は人の記憶能力を低下させるか « WIRED.jp 世界最強の「テクノ」ジャーナリズム
"This suggests that for the things we can find online, we tend keep it online as far as memory is concerned - we keep it externally stored," Dr Sparrow said.
How Google Impacts Our Memory - Search Engine Watch (#SEW)

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