29 September, 2011

スタートアップにおける重要ワード、”Pivot”の10の実例





最近、スタートアップ関連のイベントなどに参加させていただくことが 多いのですが、そういった場で頻繁に聞かれるワードの一つに”Pivot”というものがあります。

”Pivot”というのは、簡単に定義すれば、サバイブが厳しいケースなど状況を見ながらプロダクトやビジネスモデルの転換を図ることです。
しかし、具体的な事例となるとあまり知られていないように思うので、今回はそんな”Pivot”の事例をいくつかご紹介したいと思います。

1. PayPal



PayPalのケースは”Pivot”の代表例となっている事例です。
CEOのPeter Thielらの元々のアイデアは、PDA間での送金を可能にすることでした。

現在でもまだ実現の途中にあるモバイルペイメントのサービスだったといえます。

PayPalはその後、全く想定していなかったeBayにおける代金支払いの手段としての利用が増えたことを機会と捉え、
事業を転換し、今日まで成功を収めています。


2. Nokia



現在、AppleやGoogleといった携帯市場における新たなプレーヤーに押し込まれて閉まっているNokia。
実はこのフィンランドの会社の創業は、1865年のことであり、携帯事業への参入自体が”Pivot”の実例であったりします。

それまでのNokiaはゴム長靴から家電、パソコンまで様々なものを製造してきた会社であり、携帯や通信事業へ経営資源を集中させたのは1990年代のことでした。


3. Twitter



Twitterは実は”Pivot”な経営判断の中で生まれたサービスです。
Twitterを開発したJack Dorseyなどのメンバーは元々、Podcast検索サービス”Odeo”の運営、開発を行ってきていました。
当時はまだ、Podcastを調べるようなサービスがなかったためです。しかし、iTunesがその機能を果たし、そのマーケットの需要が低下する中で新たなサービスが模索され、その結果として生まれたのがTwitter(当初はTwttr)でした。


4. Flickr



最近、存在感が低下してきてはいるものの以前として写真系サービスの中ではかなりの規模を誇るFlickrはもともと"Game Neverending"というオンラインゲームとして始まりました。

そのゲームの中で、最も人気だったのが写真を共有し、ウェブ上にアップロードできるツールであり、これがFlickrという単体サービスに繋がり、2005年にYahoo!に買収されるまでに至りました。


5. Groupon



デイリーディールのマーケットを創りだした、Grouponは元々、同じ概念を適用した趣の異なるサービスからスタートしたものでした。
ファウンダー、Andrew Masonが2007年にローンチした”The Point”はソーシャルグッド系のサービスで、一定以上の賛同者が集まって初めてその賛同者たちの寄付が獲得できるというものでした。

Grouponは”The Point”のサイドビジネスとして始まりましたが、そのマーケットの大きさと成長性ゆえ、Grouponがメインのビジネスとなることとなりました。


6. Turntable.fm



Turntable.fmは既に日本では使えなくなってしまいましたが、今年最も熱いスタートアップであることに間違いはありません。
しかし、Turmtable.fmの開発チームは必ずしも音楽関連のサービスを開発してきていたわけではありません。

Turmtable.fmのチームが以前、開発に注力していたのは、バーコードに音源や動画、写真、文章などを貼付けることができる”Stickybits”というサービス。


7. HP



HPの歴史はまさに”Pivot”の良い手本といえるものです。

HPは1947年にオーディオ発振器を作る会社として始まりました。
その後、様々な電子機器を作りながら、1960年代よりコンピューティングの開発に着手し、1968年に世界初となるマスマーケット向けコンピューターの発売に至ります。

1980年代までに、HPはそのラインナップをプリンターやスキャナーまで拡大し、B2Bや教育機関向けに販売していましたが、90年代にはPCのB2Cマーケットに参入、99年にはPC以外の事業を全て切り離すという判断をしました。

そして、20世紀に入ってからはモバイル機器へのリーチを目的にPalm社を2010年に買収、2011年には最初のタブレット機器を発売しました。しかしながら、そのわずか1ヶ月後の先月、モバイル機器の開発をやめるとアナウンスしただけでなく、消費者向けコンピューター機器の事業の将来性に危惧を示し、データ分析を行うイギリスの会社を買収に動きました。今後は、B2B向けのマーケットに注力していくものと見られています。


8. 任天堂



任天堂は創業された19世紀後半当時、『花札』を作っていた会社でした。
任天堂は20世紀にかけて、様々なビジネスを展開し、タクシー事業やホテル経営などを行なっていた時期もありました。

1966年、玩具の市場に参入し、電子ゲームの開発を開始、その後ファミコンやマリオ、そしてポケモンと長きにわたって愛される商品を発売しています。


9. Instagram



7億を超えるユーザーと急速な拡大で知られるInstagramも元々はBurbnという位置情報とゲーミフィケーションを組み合わせたサービスから始まりました。

CEOのKevin SystromはQuoraに、「当初開発した写真アプリからBurbnの開発に移ったものの、再びBurbnから写真以外の機能を取り、それがInstagramになった。」と述べています。


10. Youtube



Youtubeは元々、”HotOrNot.com”に似たビデオデーティングサイト、”Tune In Hook Up”として始まりました。

しかし、ユーザーが集まらなかったため、チームはオンラインにおける動画共有に注力し、Googleに16億で買収され、今やYoutubeには1分毎に35時間もの動画がアップロードされています。

---

他にも様々な事例があるのですが、おそらく”Pivot”という話のコアというのは、これまでに投資してきたSunk Cost(埋没費用)に過度に捕らわれすぎるな、ということなのではないかと思います。

なかなか難しいことではありますが、機会を捕らえるためには重要な視点。(この考え方は組織だけでなく、個人にも当てはまりますよね。)


【参考】
10 Great Tech Company Pivots - TNW Insider
11 Startups That Found Success By Changing Direction

\