先週の話ですが、慶応であった著書「ソフト・パワー」で著名なハーバード大学のジョゼフ・ナイ教授の講演に行ってきました。
講演の題名は、"The United States, Japan, and China(アメリカ、日本、中国)"ということで中国の発展をどう受け止めるべきか、東アジアの繁栄のために日米中はどのような関係を結ぶべきかということが主でした。
正直、日本の話はオマケ程度でしか出ず、アメリカに向けた話でしたがw
ナイ教授の話をざっくりまとめると、
”中国の発展は脅威であり、今世紀中には中国との戦争が起こるのではないかと見る向きもあるが、政治経済的にも社会的にも、そして軍事的にも未熟な国であり、例えGDPで数十年後、アメリカを抜くとしても1人当りで見ればアメリカには遠く及ばない。また、根本的に衝突が発生する原因は新たな脅威が出現によるものではなく、それを恐れることである。(例:アメリカがイギリスを抜き世界一の経済大国になったときには衝突が怒らなかった。)従って、事実を冷静に受け止め、誇張や自己実現的な予言は避けなければならない。
しかしながら依然として中国は政治的に非常に不安定な国であり、成長とともに増すそのリスクをヘッジするためにも、そして中国を国際社会の一員として迎え入れるためにも必要とされるのは、密な日米関係である。中国の発展とそれに伴なう脅威を見据えると日米同盟の意味は両国にとって大きなものであり、歴史的経緯から日本にとってそれは不平等なものと見る向きもあるが、現在そして将来的な国際問題であるテロや環境、途上国支援などの面においては日本のその技術力、経験をもってよりアメリカと同等のパートナーとなるのであり、幸いにもそれらはオバマ大統領の政策的プライオリティーとも一致している。これらの現状を鑑みると、日米の利害は依然として一致しており、その同盟を通じて、日米中のトライアングルが形成されることは繁栄する東アジアの象徴となるだろう。”
という感じだったと思います。講演で印象的だったのは以下の3点。
1. 上には含めてませんがイントロのところで「安全保障というのは空気のようなものであり、それを失い始めるまでは気づかないだけでなく、そうなってくるとそのことしか考えられないものなのだ。」と仰ってました。
ついこないだまで騒がれていた普天間基地の問題はとんと聞かなくなり、中国に対する敵対的なコメントが普通に雑談の中でも出てきたりしている自分のまわりの現状をみるとまさに、という感じ。
2. アメリカ国民のうち中国を脅威と捉えている割合が54%であったことを引き合いに出されていましたが、実際にアメリカでは以下のようなCMも中間選挙の際には作られていたようです。中国に対する脅威をアメリカは僕らが思っている以上に感じているのかも。
3. 教授はアメリカが中国ではなく日本の側につく理由として、「アメリカは中国は脅威に感じているが日本に対してはそうでないこと、また日本とは民主主義的価値観を共有していること」を挙げていたんですが、最後の質問時間である学生が「アメリカ人は日本よりも中国に対して興味を持っているのは中国語の学ぶ学生の増加を見ても間違いないのではないか、だとしてもアメリカは中国側に行くことはないと言えるのか」、という質問に対し、教授は「確かにそうである。しかしそうならないようにするのは日本のすることだ。日本について世界に知ってもらうべく日本人は外に出ていかなければならない。日本ほどよい国はそうはないのだから。そのために若い学生は頑張らなければならない。」といった旨を解答として話されてました。
僕は日本から出ていきたいと思っているので、この言葉は特にしっかりと心に留めておきたいと思いました。