09 July, 2011
Kloutのようなサービスの意義と危険性
少し前になりますが、『New York Times』にKloutなどソーシャルメディア上の影響力を数値化するサービスの意義と問題点について整理した素晴らしい記事があったので以下、ご紹介。
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▼人が数値化される世界
どれだけ影響力があるのかという数値が私たち全員に割り振られる世界を想像してみてください。その世界においてその数値は、あなたが仕事を得られるか、ホテルでアップグレードをしてもらえるか、スーパーでサンプルをもらえるか、といったことを判断する材料となります。
もしも、あなたの影響力を示す数値が低ければ、プロモーションやスーツや無料クッキーはもらえません。
これはサイエンスフィクションの話ではなく、ソーシャルネットワークの何百万というユーザーに起こっていること。
もしあなたがFacebookやTwitter、LinkedInにアカウントを持っているなら、あなたは既に(もしくはまもなく)判断されていることになります。KloutやPeerIndex, Twitter Grader, lingoといったサービスが何百万というユーザーの『影響力』を測ろうと展開を進めているのです。
そのようなサービスは単にフォロワー数やフレンドの数をみているのではありません。より繊細なやり方で判断し、その結果を数値化しています。
▼影響力を可視化することの意義
これはある人びとにとっては、影響力という概念を民主化を促進するという意味で、とても魅力的なツールです。なぜなら、影響力があると認知されるためにセレブや政治家、メディア関連の仕事に従事しているといった必要などもはやないからです。そのような数値が得られることは特に個人がブランドを作る上でも非常に役立ちます。
批判的にみるひとにとってみれば、影響力を可視化など派手なテクノロジーの世界の誇張のように感じられます。そこではその数値がどのようにあなたが扱われるのかを決定するなんてありえるのか、と。
「今やあなたは望むかどうかに関わらず、数値を割り当てられることになります。その数値はあなたがデートする相手にも仕事をする相手にも見られるものであり、そのような行為は今後さらに一般化するはずです。」とある大学教授はいいます。
典型的な影響力のスコアは1から100で測られます。この分野で最も影響力の高いサービス『Klout』における平均値は1台後半であり、40台であればかなり強力だが狭い範囲であることを意味します。その一方で、100はJustine Beiberのような存在であることを意味します。
この分野の企業は未だにその方法論を模索中であり、データに篩をかけ、その他のソーシャルサービスをも取り込んでいます。今月、KloutはLinkedInのデータも取り入れることを発表しました。
Peer IndexのCEOであるAzeem Azharは、『まだ始まったばかりの分野であり、ニュアンスや精度はこれからさらに増すはずだ』と述べています。
マーケターたちもしっかり目をつけ、Kloutは2,500以上の企業で使用されています。先週、KloutはAudiがFacebookページのファンに対し、Kloutスコアを通じてプロモーションを提供することを発表しました。昨年、Virgin AmericaもKloutで高いスコアを持つインフルエンサーたちにサンフランシスコあるいはロサンジェルスまでの往復チケットを無料でプレゼントしました。さらに、Las Vegasでは、PalmホテルとカジノがKloutデータを用い、高く評価されているゲストにアップグレードやシルク・ドゥ・ソレイユのチケットをプレゼントしました。
KloutのCEO、Joe Fernandezは「歴史上初めて私たちは平等な場にいる。」と述べています。「歴史上初めて、どれだけのお金を持っているかやどんな魅力的な外見かではなく、何をどのように言うかによって評価をされるようになったのだ。」と。
▼影響力をもつための方法論
では、どのようにすればインフルエンサーになれるのでしょうか。
2200万のツイートを分析した結果、ヒューレット・パッカードの研究者たちはフォロワーを集めるだけでは十分ではないことを発見しました。インフルエンサーはフォロワーの行動を引き起こさなければならないのです。それは、彼らをヨガに行く、環境保全団体に寄付する、あるいはアップルパイのレシピをシェアする、といった行動をするよう促すことを意味します。言い換えれば、影響力とはエンゲージメントやモチベーションによってもたらされるのであり、フォロワーから搾取することではないのです。
また、あなたが関心を持っている分野における自己にオンラインでのプレゼンスに気を払うことも非常に重要です。ジェネラリストではいけません。
そして、なによりも重要なことは熱意、豊富な知識、信頼をもっていることです。
▼その数値は完璧なのか、その問題点とは
しかし、このような数値は主観的なものであり、未だ不完全なものとなっているのは事実です。ほとんどの分析サービスはユーザーのTwitterやFacebookのプロフィールに依存しており、ブログやYoutubeへの投稿といったオンラインのその他の場所での活動を除外しており、オフライン上での影響力は全くカウントされていません。
Peer IndexのAzharはこのような問題を『Clay Shirky問題(Twitterのようなサービスをあまり使っていない著名ライターや研究者が高く評価されないこと)』と呼んでいます。(Clay Shirkyはwebに関する研究で有名なNYU在籍教授)
また、AltimeterグループのJeremiah Owyangは影響力を単質的な数値で測ることは非常に危険であると書いています。彼はKloutについて感情などに関する分析が含まれておらず、ネガティブな言論を集めるようなユーザーであっても高い数値が出ると説明しています。さらに、単一の指標であることはTwitterをあまり熱心に使っていなくとも投稿したYoutube動画が偶然バイラルヒットしただけで数値が高くなる、といった点でも誤解を招くと指摘しています。
さらに、高いスコアをもつインフルエンサーが小売や将来の雇用者、配偶者まで高待遇を受ける”ソーシャルメディア・カースト”というシステムを作り上げていると危惧する人も中にはいます。
スコアを高めようと道を模索するのも無理はないが、本当の影響力を得るには時間とコミットメントが必要になります。なぜなら、オンラインにおける影響力は、休暇中にインターネットから少し離れただけで、大きな影響を受けることになるからだ。Schaefer氏はいいます、「2週間のバケーションをとった後、私のKloutは下がってしまった」と。それほどのコミットメントを私たちは果たして継続することはできるのでしょうか。
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このような数値化、定量化の是非というのは非常に難しいですね。。
確かに、それぞれの人の興味・関心が異なる以上(それぞれの人にとっての)面白い人はそれぞれに異なる尺度で存在するはずですが、それを知るためのサーチコストが高すぎるため、数値化されたものでその判断を行うことは非常に理にかなったこと。(確度が高いのは間違いないですし。)
ただその一方で、それにとらわれすぎると、井の中の蛙っぷりをさらに深めてしまうというジレンマ。
ソーシャルメディアとの適度な関わり方というのはまだまだ模索段階ですが、バランスを常に心がけたいですね。
【参考】
『Got Twitter? What's Your Influence Score - NYTimes.com』
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※こちらの記事はTMHブログポータル(http://www.tribalmedia.co.jp/blog/)の方にも転載いただいております!